夜明けを待ちながら

ローマの病院で働く妹が産休を取ることになり、ルーシーは妹の代診医を引き受けた。
勤務先のロンドンの病院を辞め、逃げるようにローマに向かう。
とんでもない男を立派だと勘違いし、生涯の愛だと信じていたなんて。
ルーシーは身も心もぼろぼろだった。
だから、ヴィットーリオを見た瞬間、わかったのかもしれない。
この人は私と同じ境遇にある、と。
彼はその整った顔立ちに、ときおり悲しみと苦痛をにじませる。
ルーシーは彼の心に向き合いそうになる自分をいましめた。
もう私の人生にややこしいロマンスは必要ない。
シングルマザーの姉の愛娘が父親を知りたがっているのがわかり、レインは胸が痛んだ。
なんとかして姪の願いを叶えたい。
彼女はさっそく姪の父親探しを開始した。
やがて、姉の昔の恋人で資産家のジャックを突き止める。
新聞の社交欄をにぎわす、かなりのプレイボーイだ。
電話をしても手紙を書いても反応なし。
思いあまって待ち伏せし、面と向かって問いただしたが、身に覚えはないとにべもなく突っぱねられてしまう。
今までさんざん浮き名を流してきたくせに! 姪にそっくりな彼の目を見て、レインはますます確信を深めた。
ハンナは心に傷を抱えて〈ブルームーン・イン〉を訪れた。
宿の女主人の勧めに従って庭園に出てみると、廃墟となった石造りの教会の窓に、月がかかろうとしていた。
それは、今月二度目の満月――ブルームーンの夜だった。
魔法のような夜の静けさに包まれながらハンナの心は静まらない。
私が“人並み以下”ですって! 社長のロスが言ったという言葉は、思い出すだけでも腹立たしい。
あれほど懸命に働いたのに、こんな侮辱の言葉を受けるなんて。
「今に見ていなさい、ロス・ジェリク!」思わず叫んだときだ。
月の光の下に、すべての元凶、ロスその人が現れた。
ジェニーヴァはホテルのイベントプランナー。
新たにボスとなった男性との面談を前に緊張していた。
よりによって、マイケルがボスだなんて! マイケルは、一年前彼女が教会の祭壇の前に置き去りにした男だ。
彼は今も私のことを許してはいないだろう。
もしかしたら、このまま解雇されるのかもしれない。
ところが、ジェニーヴァの不安をよそにマイケルは、彼女のことなど忘れてしまったかのようにふるまった。
そのうえ、重要なイベントの企画を任せようとまで言う。
ああ、彼はいったい、なんのゲームを始めようとしているの?幼少期に父を亡くした玩具デザイナーのセイラは、男性への接し方がわからないまま二十六歳になった。
そんな彼女を見かねて、同僚が恋のマニュアルを作る。
ステップ一――“さりげなく物を落とし、会話の糸口をつかむ”セイラは食堂に向かい、標的の前にフォークを落とそうとするが、緊張のあまり別の男性の上に皿ごとひっくり返してしまう。
不運にも、相手はセイラが社内で最も恐れるマットだった! いつも不機嫌な顔で、眼光が鋭く、会話すらしたことがない。
身をすくませ叱責を待ち受けていると、思わぬ言葉が聞こえた。
「きみは大丈夫かい?」そしてマットは優しく彼女の手を取った。
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